傭兵の二千年史

  • 著者: 菊池良生
  • 出版社: 講談社
  • サイズ: 新書
  • ページ数: 229p
  • 発行年月: 2002年01月
  • 定価: 756円

目次

  1. クセノフォンの遁走劇
  2. パックス・ロマーナの終焉
  3. 騎士の時代
  4. イタリア・ルネッサンスの華、傭兵隊長
  5. 血の輸出
  6. ランツクネヒトの登場
  7. 果てしなく続く邪悪な戦争
  8. ランツクネヒト崩壊の足音
  9. 国家権力の走狗となる傭兵
  10. 太陽王の傭兵たち
  11. 傭兵哀史
  12. 生き残る傭兵

読書メモ

「第八章 ランツクネヒト崩壊の足音」にナッサウ伯の軍制改革について詳述してあります。記述の細かいところは若干あやしいですが、要点を押さえるのに適度なボリュームなのと、入手のしやすさからおすすめです。前半は傭兵の本場イタリアの「コンドッティエーロ」やドイツの「ランツクネヒト」の話が中心なので、時代も15-16世紀前半の話になります。

傭兵という視点を中心にして見れば、確かにオランダ・スウェーデンなど軍制改革がおこなわれた国では傭兵を減らす方向で軍隊の規律を保つのに「成功」したわけですが、同時に、同時代の三十年戦争ほど傭兵が投入された時代もないわけで、その対比が良く出ています。このように軍制改革を非常に前向きに評価しているのも、オランダ贔屓から見れば好感が持てますが、軍制改革はオランダ・スウェーデンなど小国でおこなわれた実験だった、という考え方も同意できる部分です。たしかに、この制度をフランスのような大国では維持できないでしょう。


~Further Reading~

著者はハプスブルク家/神聖ローマ帝国/三十年戦争等のテーマで、文庫・新書やムック本などを量産しています。もともと歴史の専門家ではなく文学畑出身のようなので、文章がわかりやすく、最初に読むものとしてや概説としてはいずれも入りやすい本です。また、ドイツ語系の文学者なので、三十年戦争の元ネタが、その辺の英語概説本の丸写しではないあたりも高ポイントです。

とはいえ、新書やムックといった書籍の性格上、出典があまり明記されていませんし、どこまで本当なのか若干疑問だったり、誇張した表現も目立ちます。同様に、絵画などの画像もソースは示されず、当時描かれた絵画と後代に描かれた絵画(とくにロマン主義時代の歴史画)とが混在しています。

それに、どうも最近のものになればなるほど内容に誤りが増えるような気がします。昔から同じような時代の似たようなテーマで書いていることもあり、また、文学者の書き方は派手なので(たとえば単に「勝った」とすればいいところを「勝ちに勝った」としたり)、逆に気がつきやすいともいえますが。個人的には、情報のアップデートや精査がされていないんじゃ感を持っています。

戦うハプスブルク家 近代の序章としての三十年戦争

  • 著者: 菊池良生
  • 出版社: 講談社
  • サイズ: 新書
  • ページ数: 206p
  • 発行年月: 1995年12月
  • 定価: 735円

読書メモ

日本語で読める三十年戦争のほぼ唯一の入門書です。章立てがわかりやすく、文章も読みやすくなっています。とくに章立てに関しては、三十年戦争自体が複雑なのにもかかわらず、時系列・登場人物順にうまくまとめられており、どの部分から読んでも良いよう作成されているといえます。ウエッジウッドの『ドイツ三十年戦争』はボリュームもあり高額なので、まずはこれで基礎知識をつけると良いと思います。

けれど、この本のタイトルはこれで良かったのか悪かったのか…。(以前、管理人の指導教官が講談社現代新書で本を出したときも、ヘンテコなタイトルにされたと嘆いていました)。「ハプスブルク」としないと、「三十年戦争」では商業ベースきびしいんでしょうね。