コミック ひとはけの虹
- 著者: Cuvie (著)
- コミック: 1-3巻
- 出版社: 講談社( シリウスコミックス)
- 発行年月: 2017/4/7(1-3巻完結)
読書メモ
西洋美術史漫画です。女性漫画家による西洋美術史漫画は、『アルテ』や『宮廷画家のうるさい余白』など近年流行りですが、この作品は、オムニバス形式とはいえ時代がかぶるものが多いこと、作者の美術史に関する知識が相当にマニアック(ファブリティウスとか…)なためピックアップしました。もちろん、完結作であるというのもここに挙げた理由のひとつです。
話の大筋は、若きラファエロが、ダ・ヴィンチの家にあった「時空転移装置」(タイムマシン)で時代を超えて様々な画家と交流する…と書くと、なんだか荒唐無稽なSFっぽい感じになってしまいますが、そんな設定が気にならないほど完成度の高い作品になっています。画家たちも、有名な実在人物だけではなく、比較的マイナーな画家や無名(架空人物)までさまざまに登場しますが、物語全体を通して、「美」を永遠にキャンバスの中に留めておくことができるのか?という大きな問いが柱となっています。もっとも、その答えは「否」であるわけなのですが、かといって作品内に悲壮感はありません。タイトルも含め、ラストも非常に読後感の良いものと思います。
ちなみに、第2話の「Blossom」は、最近日本で公開された映画『チューリップ・フィーバー』を思わせる内容です。これはめずらしく架空の画家の話になっています。 とにかく、作者の方が、おそらく16-17世紀のイタリア、そしてオランダ・フランドル絵画に造詣が深いのでしょう(それ以外の時代もありますが)。絵画史だけではなく、その時代に何があったか、誰が居たか、というのもかなり細かいところまで調べてあります。八十年戦争にかぶる時代だと、以下の画家が取り上げられています。
- カラヴァッジォ
- ルーベンス
- ベラスケス
- ファブリティウス
- フェルメール
作中に出てきたと思われる絵画を(全部ではありませんが)列挙しておきます。絵画好きにも非常に楽しめる作品です。