鉄腕ゲッツ行状記―ある盗賊騎士の回想録

  • 著者: ゲッツ・フォン ベルリヒンゲン(著) 藤川 芳朗(翻訳)
  • 出版社: 白水社
  • サイズ: 単行本
  • ページ数: 244p
  • 発行年月: 2008年03月
  • 定価: 2,625円

読書メモ

デューラーと同時代人でもあるドイツの一騎士の回想録です。『ネーデルランド旅日記』とは時代が同じでも、立場の違う人間が書くとかなり別物に感じられるので、ぜひ併せて読みたい一冊。このサイトがメインで扱う時代より50年以上前になります。 半世紀前ではありますが、ドイツ騎士のメンタルは八十年戦争時代と大差ありません。その点で非常に参考になる一冊です。

「傭兵」や「騎士」という単語は本書を通してたくさん出てきますが、「ランツクネヒト」とはだいぶ違う印象を受けます。主人公ゲッツ自身が大掛かりな戦争にはあまり参加していない、ということもありますが、この中で傭兵が集まって行動する場合は、大抵が数十騎の騎兵のみですし、「盗賊騎士」や「貧乏騎士」とされている割には、「友人」に伯爵などの高位貴族も多く、皇帝や司教とも交渉事をおこなっている描写も少なくありません。

注釈が充実していて、本書に挙がる当時の貴族たちについての説明も詳細です。年表もついています。あとは索引があれば言うことなかったです。なにより驚きなのは義手、「鉄腕」です。この時代にこんなに精巧な義手が既にあったんですね。

Lovis Corinth Götz von Berlichingen 1917

Lovis Corinth (1917) 回想録を書くゲッツ In Wikimedia Commons