オランダ小史 先史時代から今日まで
- 著者: ペーター・J・リートベルゲン (著), 肥塚隆 (翻訳)
- 新書: 291ページ
- 出版社: かまくら春秋社
- 発行年月: 2018/8/13
読書メモ
ひっそりと出版されていたオランダ史の本。8月、日経の広告で「え?」って知り、けっこう苦労して(国内なのに2週間近くかかった…)手に入れました。発売直後のほうが手に入りにくかったです。
直近で出版された桜田先生の「物語 オランダの歴史」は「オランダ」になる直前からなので450年ほどの時間軸です。こちらは副題にあるとおり、「先史時代から」なので、全体的に広く浅く網羅したものです。訳者はオランダ大使経験者で、赴任中、他国の大使とともに現地で教科書代わりに紹介された本がこちらとのこと。失礼ながら、過去に別の元大使がイデオロギーの強いオランダ史を書いていたので、今回も似たようなものかなあと思っていたのですが、本書は丁寧な訳出に徹してあり、ほとんど訳者の意図は垣間見えません。また、ふんだんに使われたカラー図版と相まって、オランダ史の導入には非常にありがたい本になっています。初学者には価格が壁ですが…。
八十年戦争のパーツに関しては、ひとつ面白い試みがされていました。あとがきにもあるように、専門家との相談のもと、従来「法律顧問」と訳されてきた役職を「大法務官」としたそうです。現代の企業の法律顧問のイメージとはニュアンスが違うから、とのことのようです。「ゴイセン」撲滅論者としては、過去に使われていた歴史用語のすべてが是とされるべきではないと思ってますし、研究者ではない視点からのこういった試みがなされるのは良いことだと思います。