イギリス革命史(上)―オランダ戦争とオレンジ公ウイリアム
- 著者: 友清理士
- 出版社: 研究社
- サイズ: 単行本
- ページ数: 270p
- 発行年月: 2004年07月
- 定価: 2520円
読書メモ
タイトルが「イギリス革命」ゆえ、イングランド内戦(清教徒革命)と思いきや、その30年後以降の話です。ウィレム三世とジェームズ二世の2人が、上下巻通しての主人公になります。ウィレムについてはイングランド国王になる前提で書いているので、英語表記で「オレンジ公ウィリアム」とされています。
人に言われて気づいたのですが、このサブタイトルの「オランダ戦争とオレンジ公ウイリアム」、「ウィレム三世」と明記されているわけではないので、ウィレム一世(沈黙公)と混同しやすいかもしれませんね。「オランダ戦争」もどちらかというと一般的には「オランダ侵略戦争」と呼ばれるため、場合によっては「オランダ独立戦争(この用語自体も八十年戦争の誤用ですが)」と紛らわしいかもしれません。
著者もいっているように、「研究書への橋渡しとなる通史」という位置づけ。『世界の歴史』等の概説シリーズ以上に詳細に書かれていること、「この本を通じて現代日本を斬る!」みたいなビジネス書的意図などもないプレーンな叙述であることからも、著者の狙いは成功しているといって良いでしょう。こういうコンセプトの本がもっと増えてくれると、西洋史の間口ももっと広くなると思うんですが…。
『金獅子亭』のカバーする時代からも20年以上も後の時代のことなので、ここでの紹介は前半の上巻のみ、オランダ時代部分にとどめておきます。とくに1672年、ルイ十四世のオランダ侵略戦争のくだりはオススメ。この頃のウィレムは20代前半とまだまだ若いのですが、『黒いチューリップ』同様に、いかにもオランイェの人っぽい、用心深く用意周到な人物として描かれています。個人的には、ナッサウ=ザイレステイン伯フレデリク(オランイェ公フレデリク=ヘンドリクの庶子でウィレム三世にとっては伯父)に、日本語でここまで言及されている本があることに感動をおぼえました。