ネーデルラント旅日記

 

  • 著者: アルブレヒト・デューラー /前川誠郎 訳
  • 出版社: 岩波書店
  • 発売日: 2007年10月
  • 定価: 735円

読書メモ

1996年の初版本を、再販にあたり訳者みずから訳文を改訂したもの。このサイトの扱う時代より半世紀ほど前、カール五世が戴冠した頃の時代になります。

1520年、年金の支払が途切れてしまったため、デューラーは妻と共に新皇帝に支払を求める直訴の旅に出ます。当時の一般人(というにはデューラーはかなり金持ちの部類に入ります)の、旅の様子がわかるものとして稀有な訳書です。とくに、デューラー本人が細かく出納をつけているので、当時の物価が大体わかります。

それを補完するのが、訳者による通貨名称一覧とおおまかな円換算です。また、訳者が行程地図までつけていてくれるので、行程に何日かかるかなども想像がつきます。いずれも非常に便利です。『金獅子亭 本館』の「17世紀の通貨価値」で詳しく紹介しています。

なお、1520年8月末に、ブリュッセルにある「フォン・ナッサウ伯の館」に行った旨が記されています。時代からいって、ヘンドリク三世・ファン・ナッサウ=ブレダ(ウィレム沈黙公の伯父で「マルガレータ女公」の枢密顧問官)の館と思われます。「50人は寝れるベッド」や「ナッサウ伯の傍らに落ちた隕石」があったそうです。 また、デューラーについてよく言及される「ルター哀悼文」もこれに載っています。