戦争と資本主義

  • 著者: ヴェルナ-・ゾンバルト (著), 金森誠也 (翻訳)
  • 出版社: 講談社学術文庫
  • サイズ: 文庫
  • ページ数: 329p
  • 発行年月: 2010/06
  • 価格 1,103円

読書メモ

2010年に再文庫化された戦史関係から2冊。いずれも軍事史として非常に定評のある基本の書です。この2冊そのものにとくにつながりはありませんが、時系列に並べてある書き方・トピックス毎の書き方、と切り口が違うので、比較しながら読むと面白かったです。

もう一冊はこちら。→ 「ヨーロッパ史における戦争

といっても、どちらかというと軍事史というよりは通史・概説書に近いともいえます。ヨーロッパ史は政治・経済・宗教とも戦争と切り離して考えられないので、「戦争」の文言のみで、軍事史・戦史と敬遠されてしまうともったいない本たちです。 こちらは初版1913年。100年前、しかも、第一次大戦前の著作です。かといって特に古さは感じず、日本語訳も初版は1996年になっています。割と最近…と思いつつも、訳者自身が「早くも15年以上の歳月が経ち」と書いており、かなり訳も改善したというので、新版を購入したほうが良いかもしれません。

  • 第1章 近代的軍隊の誕生
  • 第2章 軍隊の維持
  • 第3章 装備
  • 第4章 軍隊の給養
  • 第5章 軍隊の被服
  • 第6章 造船

ハワードとは対象的に、各論データをもとにした、細かい数字による描写が目立ちます。軍隊の給養、とくに穀物取引のあたりは、ウォーラーステインの「近代世界システム」に通じる部分もあります(その辺も含めて、あまり古さを感じません)。

逆に、オランダについては言及の割合が低いです。軍事史上オランダがスポットライトを浴びたのは、ロバーツの軍事革命論(1955)からなのは間違いありませんが、オランダが教練や近代的攻城戦を始めたことについては19世紀から既に指摘されている概念でもあり、ほとんど陸軍に触れられていないのはやや片手落ちの感はあります。オランダの経済についても、序文で「資本主義の中心はオランダ」と明記されている割に、上記の穀物取引の部分あたりにしか出てきません。

こちらも文献リストはありがたいの一言。ですが、すべてタイトルが日本語訳で書かれていて、そしておそらくこの中で実際日本語訳で出版されているものはほぼ皆無(ぜんぶきちんと検証してないのでゼロとは言わない)ではないでしょうか。原著のタイトルにさえ中りがつけば、すべて1913年以前の著作(すべてPD)なので、逆に入手は容易かもしれません。